企業の顔となる大切な一作をご依頼いただき、心より光栄に存じます。
社長様よりお伺いいたしました、会社が目指す未来、そして社員の皆様と共に歩まんとするその熱い想いを、私なりに墨に託し、紙上へと解き放ちました。
まず「革」という字は、古い皮を剥ぎ、鞣して全く新しいものへと生まれ変わらせる、力強い変革の姿を表しております。ただ古いものを壊すのではなく、そこにある本質を見極め、敬意を払いながらも、未来のために断ち切るべきものを断ち切る。その峻厳な決意と、時に伴う痛みを乗り越える強さを、荒々しくも勢いのある筆致に込めました。一画目の、紙に深く食い込むような起筆は、その揺るぎない意志の第一歩でございます。
そして、その意志の先に生まれる「新」の文字。
ここでは、「革」の力強さとは対照的に、生まれたばかりの若木が天に向かって伸びていくような、生命力と希望を表現いたしました。左側の「立」と「木」が合わさった部分は、しっかりと大地に根を張りながらも、決して現状に留まることなく、常に上へ、先へと向かう姿勢を。そして右側の「斤」は、自らの手で未来を切り拓いていく、創造の営みを表しております。しなやかさの中に、凛とした佇まいを感じていただけるよう、墨に潤いを持たせ、伸びやかに描きました。
私が日々を過ごすこの場所では、雪解け水が岩を穿ち、木々は厳しい冬を越えて芽吹き、季節ごとにその姿を変えてまいります。自然の営みそのものが、絶え間ない革新の連続なのです。
守るべき伝統の美しさと、変わることを恐れない勇気。その二つが調和した時にこそ、真の「革新」が生まれると、私は信じております。
この書が、社員の皆様の心に日々新たな火を灯し、訪れる方々には貴社の揺るぎない挑戦の精神を静かにお伝えする一助となれば、書き手としてこれに勝る喜びはございません。
ご依頼いただいた会社様の益々のご発展を、心よりお祈り申し上げます。
家禅