この一枚に込めましたのは、張り詰めた一瞬の静寂と、どこまでも続く求道の精神、その二つの融合でございます。
まず、一文字目の「弓」。
丸みを帯びながらも力強く、内へ、内へと「気」を溜め込むように表現いたしました。弓が満月のように引き絞られ、心と体が一体となり精神が極限まで高まった、まさにその一瞬の姿です。墨のかすれは、放たれる寸前の、目には見えぬ気合いの迸り…。この一文字に、凝縮された全ての力を込めました。
そして、それに続く「道」。
その溜め込んだ全ての気を受け止め、未来へと繋げるための、長く、そして揺るぎない線で表しております。特に最後の一画は、一度きりの「離れ」で終わるのではない、日々の稽古の積み重ね、そしてこれから先も続いていく凛とした覚悟を示したつもりです。この線が、作品全体の礎となっております。
一瞬の極致である「弓」と、永続の鍛錬である「道」。
この二つが一つとなって初めて「弓道」の崇高な精神が宿ると信じ、呼吸を整え、一気呵成に書き上げました。
この書が、ご依頼くださった方の道場に、そしてその心の中に、清々しい風を吹き込む一助となれば、書き手としてこれ以上の喜びはございません。
家禅