全身全霊で一つのことに打ち込む勇気
The courage to commit completely, like a waterfall to its path.
選字の背景: 仏滅の静かな日に、自然の持つ圧倒的なエネルギーと向き合う。
李白の詩「飛流直下三千尺、疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと」を想起させる「瀧」の一字。その姿は、ただひたすらに、一点を目指して落下し続ける水のエネルギーの結晶です。詩では、その迷いのない一筋の流れが、堅固な岩をも砕く力を持つことを「無心」という言葉で表現しました。
「瀧」の持つ力は、単なる物理的な破壊力ではありません。それは、あれこれと思い計らうことなく、ただ一点に自己のすべてを投入する時に生まれる、純粋な力の現れです。禅の修行者が坐禅において雑念を払い、ただ「坐る」という行為になりきるように、瀧はただ「落ちる」という天命にその身を委ねています。この一点集中の精神は、あらゆる道を極めようとする者にとっての理想の姿です。
仏滅という日は、万事において凶とされ、派手な行動は慎むべきとされます。しかし、見方を変えれば、外的な活動を控え、内なるエネルギーを涵養するには最適な日とも言えます。私たちは日々、無数の選択肢と情報に惑わされ、力を分散させがちです。今日この日は、瀧の如く、自らが真に為すべきことを見定め、そこに全霊を傾ける覚悟を静かに固める。その内なる決意こそが、やがて人生の岩盤を穿つ、大いなる力となるのです。