苦 – KU –

苦

苦しみを成長の糧へと転換する智慧

The wisdom to transform suffering into a source of growth.

生老病死愛別離苦 怨憎会苦逃れられぬと知る朝に一歩を踏み出す 強さあり

選字の背景: 不成就日と重なる月曜日。人生の根源的な苦しみと向き合い、それを乗り越える力を探る。

仏教では、人生の本質は「苦」(ドゥッカ)であると説きます。これを四苦八苦といい、生きる苦しみ、老いる苦しみ、病む苦しみ、死ぬ苦しみに加え、愛する者と別れる苦しみ(愛別離苦)、怨み憎む者に会う苦しみ(怨憎会苦)、求めても得られない苦しみ(求不得苦)などが挙げられます。これらは、人間である以上、誰もが避けては通れない根源的な苦しみです。

詩は、これらの逃れられない苦しみの存在を真正面から受け止めることから始まります。特に週の始まりである月曜日、そして物事が成就しないとされる不成就日にこの字と向き合うことは、安易な楽観論を退け、人生の厳粛な真実を見つめることに繋がります。

しかし、禅の教えは、ただ苦しみを諦観するのではありません。「煩悩即菩提」(ぼんのうそくぼだい)という言葉があるように、苦しみや悩み(煩悩)そのものが、悟り(菩提)へと至るきっかけとなり得ると説きます。苦しみから逃げようとするのではなく、その只中で、なお「一歩を踏み出す強さ」を見出すこと。そこにこそ、人間の尊厳があります。苦い良薬が身体を癒すように、人生の「苦」もまた、私たちの魂を成熟させるための不可欠な要素なのかもしれません。ビールや山菜の苦みを「旨い」と感じられるようになった時、人は一人前になると言われるように、人生の苦さを深く味わうことで、私たちはより豊かな境地へと至るのです。

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