揺るがぬ自己という内なる支柱を立てる
To build an inner pillar of an unshakable self.
選字の背景: 関東大震災に由来する「防災の日」。真の防災とは何かを問う。
九月一日は、防災の日として定められています。私たちはこの日、非常持ち出し袋を確認し、避難経路を話し合うなど、物理的な備えを再点検します。しかし、禅の教えは、それと同時に、いや、それ以上に重要な「内なる備え」の必要性を説きます。それが、心の「柱」を立てることです。
家屋がその構造を支える柱によって成り立っているように、私たちの心もまた、確固たる信念や哲学という「柱」によって支えられています。詩の後半が示すように、予測不能な災害や人生の困難によって「大地が揺らぐ」ような事態に遭遇した時、私たちを真に支えてくれるのは、物質的な備蓄だけではありません。何があっても見失うことのない「一筋の志」、すなわち、自分はいかに生きるべきかという根本的な問いに対する、自分自身の答えです。
禅における「不動心」(ふどうしん)とは、まさにこの心の柱が確立された状態を指します。それは、感情を押し殺すことではなく、嵐の中でも静かにそびえ立つ大木のように、中心が定まっている状態です。書において、一文字の骨格をなす縦画が力強くなければ全体が崩れてしまうように、人生においても、この精神的な支柱が不可欠です。今日という日に、改めて自らの心の柱は何か、それは確かなものかを静かに問い直してみたいものです。