中 – NAKA –

中  NAKA  なか 家禅 IEZEN.JP

両極端を離れた中道の精神

The spirit of the Middle Way, which avoids both extremes.

有にも偏らず
無にも偏らず
二つの極みを離れたる
その中(うち)にこそ道はある

選字の背景: お彼岸の中日にあたり、秋分の日も近い。バランスと調和の精神を学ぶ。

お彼岸の中日は、太陽が真東から昇り真西に沈み、昼と夜の長さが等しくなる秋分の日に最も近い日です。この自然界の完璧なバランスは、仏教が説く「中道」(ちゅうどう)の精神を、私たちに教えてくれます。

「中道」とは、二つの極端な見解や生き方を離れ、そのどちらにも偏らない立場を貫くことです。例えば、「有る」という見方(常見)と、「無い」という見方(断見)の両極端を退け、すべてのものは縁起によって存在する、と見るのが仏教の基本的な立場です。また、修行においても、快楽にふける生き方と、極端な苦行に身を投じる生き方の両方を否定し、その「中」にこそ、悟りへの正しい道があると説きました。

私たちは、物事を白か黒か、善か悪か、といった二元論で判断しがちです。しかし、世界の真実は、多くの場合、そのグラデーションの中にあります。「中」の一文字は、私たちに、一方的な見方に固執することなく、常にバランスの取れた、柔軟な視点を持つことの重要性を教えてくれます。書において、中心線が通っていながらも、左右非対称の動きの中にこそ美しい造形が生まれるように、私たちの生き方もまた、確固たる軸を持ちつつ、様々な価値観を受け入れる「中」の精神によって、より豊かで調和の取れたものになるのです。

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