
計り知れない深淵を内に秘め、動じない
Containing an immeasurable abyss within, he remains unfazed.
選字の背景: 穏やかな表面の内に深淵を秘め、些事に揺るがぬ不動の心を目指す。
秋の澄んだ光が、近くの湖(みずうみ)の水面をきらきらと照らすとき、その表面は穏やかで、空の青や雲の白を映し、浅く、明るい世界に見えます。しかし、その光も届かぬ底には、どれほどの深さが広がっているのか、誰も知ることはできません。水面は静まり返っていても、内には計り知れない水量を蓄え、力強い流れを秘めている。人の心の在り方も、また、かくありたいものです。日々の暮らしでは、喜怒哀楽の波が絶えず心の表面を揺らします。しかし、その波に一喜一憂し、我を忘れて揺れ動いてしまうのは、内に頼るべき深みがないからかもしれません。禅で言う「不動心」とは、感情をなくすことではなく、内に海の如き深淵を湛え、表面の些細な波では揺らがない、静かな強さのことです。