幽 -YUU-

幽  YUU ゆう 家禅 IEZEN.JP

奥深く見えないものへの畏敬の念

Awe of the deep and unseen.

選字の背景: 言葉以前の、大いなる沈黙への畏敬。

秋の午後、陽が傾き始めると、木々の影は長く伸び、その奥は深い闇に沈んで見えます。光の届かぬその場所は、どこか近寄りがたく、静かで、何か大きな存在が息づいているかのよう。その、奥深く、仄暗い世界こそが「幽」です。「幽」という文字は、山(山)の奥深く、微かで(幺)見えにくい場所を示しています。それは、私たちの日常の感覚や、合理的な思考では捉えきれない、神秘的な領域を象徴します。現代に生きる私たちは、目に見えるもの、証明できるものばかりを信じがちです。しかし、生命の源、人の縁、創造性の閃き、大いなる自然の摂理といった、本当に大切で、私たちを生かしている力は、目には見えません。この教えは、その見えないものへの「畏敬の念」を忘れてはならない、と説きます。全てを理解し、支配できるという人間の驕りを手放し、人知を超えた大いなる存在に、静かに頭を垂れる心。その謙虚さの中にこそ、真の平安と、芸術や精神世界の深い探求への扉が開かれるのではないでしょうか。書においても、計算し尽くされた線よりも、どこか人知を超えた、見えざる力によって引かされたかのような一本の線が、人の心を打つのです。

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