了 -RYO-

了 RYO  りょう 家禅 IEZEN.JP

物事を完全に理解し、区切りをつける

Understand things completely and make a distinction.

選字の背景: 一つの事を了とは、一つの迷いを断つことなり。

秋が深まりとともに、木々が葉を落とし、実りの季節が終わりを迎えるように、万物には必ず「了」の時が訪れます。この「了」という文字は、子供が腕を組んだ姿とも言われ、一つの物事が完成し、完了した状態を表しています。この教えは、物事をただ途中で投げ出すのではなく、その本質を深く理解し納得した上で、自らの手で静かに幕を引くことの尊さを説いています。中途半端な理解、未練や執着を残したままの終わりは、真の「了」ではありません。それは、心の内に、いつまでも消化されない澱(おり)として残り続けます。何かを「了」するということは、自分の中で、”そのこと”を「完全に理解」し、過去への執着に「区切りをつけ」、次なる道へと心を向ける、静かで、そして覚悟のいる内なる作業です。書においても、最後の一画を書き終えた瞬間、その作品は「了」を迎えます。もう、付け加えるものも、削るものもない。その潔い区切りこそが、作品に完成という命を吹き込むのです。人生という書物の一章一章を、丁寧に、そして完全に「了」としながら、私たちは次のページをめくってゆくのかもしれません。

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