
芸の道は、自己を磨き、人間性を高める道
The path of art is a path to self-improvement and human development.
選字の背景: 芸とは、技を磨き、やがては己の人格を磨く道。
秋はまた、「芸術の秋」という一面を持ちます。木々が自らの色を深めてゆくように、人もまた、この静かな季節に、自らの内面を深く耕し、何かの「わざ」を磨きたくなるのかもしれません。この「芸」という文字の古い形「藝」を紐解くと、それは、人が土に苗木を植え、丹精込めて育てる姿から生まれたと言われます。単なる技術(テクニック)ではなく、生命を慈しみ、時間をかけて育む「わざ」。それが「芸」の本来の姿でした。この教えは、その「芸」の道を歩むことが、そのまま「自己を磨く」道であると説きます。苗木を育てるように、日々の地道な水やりや手入れ(修練)を欠かすことはできません。その繰り返しの中で、技術と共に、忍耐力、集中力、そして物事の本質を見抜く眼が磨かれてゆくのです。そして、その道は、やがて「人間性を高める道」へと繋がります。「芸は人なり」と言われますが、どれほど技術が巧みであろうと、その人の心根が卑しければ、その芸が真に人の心を打つことはありません。芸を磨くことは、自らの心を磨き、人間性を高めることと、決して分かつことはできないのです。私も、書という芸の道に身を置いていますが、それは単に美しい字を書くことではなく、一本の線を通して、自己と向き合い、心を磨くための、生涯続く修行であると感じています。