
一足飛びを望まず、漸進的に道を歩む
Don’t expect to take a leap, take the path incrementally.
選字の背景: 近道を求めず。一歩の積み重ねが遠くへ至る。
季節が秋から冬へと、目には見えぬほどの速さで、しかし確実に移ろっております。「漸」という文字は、まさにこの季節の歩みのように、少しずつ、次第に進んでいく様を表しています。私たちは、つい成果を急ぎ、近道を探し、一足飛びに目的地へ辿り着こうとしてしまいます。しかし、基礎を飛び越えて得た地位や技術は、砂上の楼閣のように脆(もろ)いものです。小さな歩みでも着実に、昨日よりわずかでも前へ、その目に見えないような一歩一歩の積み重ねだけが、やがて遥かなゴールへと運んでくれます。禅の修行もまた、「漸修(ぜんしゅう)」という言葉がある通り、日々の地道な実践の連続です。今日坐り、明日も坐る。その遅々とした歩みこそが、実は頂への最短の道なのです。焦る必要はありません。牛の歩みのようにゆっくりでも、止まらずに進むこと。その一歩一歩の景色を味わうことこそが、真の道のりなのです。