
聖なるものは遠くになく、日常の営みの中にある
The sacred is not far away, it is in our everyday lives.
選字の背景: 奇跡は日常にあり。当たり前の今を聖と知る。
「聖(ひじり)」という文字は、耳(耳)と口(口)と王(𡈼・まっすぐに立つ)から成り立ち、天の声を聴き、真理を語る賢人を表しました。私たちは「聖なるもの」というと、奇跡や、遥か彼方の聖地、あるいは特別な修行を積んだ高僧のことだと思いがちです。しかし、この教訓は、そして禅の教えは、それを否定します。 「平常心是道(びょうじょうしんこれどう)」。ご飯を食べ、お茶を飲み、掃除をし、眠る。そのあまりにも当たり前な日々の営みの中にこそ、宇宙の真理があり、最も「聖なるもの」が宿っているのです。特別な奇跡を追い求める必要はありません。朝、目が覚めたこと。誰かに「おはよう」と言えたこと。一杯の白湯(さゆ)の温かさ。その一つひとつが、二度とない奇跡の連続です。私が筆を洗う、その何気ない所作一つにも、心を込めれば、そこは聖なる場所となります。どうぞ、足元をご覧ください。あなたが今日歩いたその一歩、その日常の中にこそ、探し求めていた聖地は広がっているのです。