
人情に厚く、信義を重んじる
Kind-hearted and respectful.
選字の背景: 情けを深く、信を重く。誠実な日々を重ねる。
昨日までの「小正月」の賑わいが去り、冬の静寂が戻ってまいりました。かつてこの日は「薮入り(やぶいり)」と呼ばれ、奉公人が実家へ帰るなど、人情の機微に触れる休息の日でもありました。そんな日に、人の情けの深さを説く「篤」という字を記すことに、不思議な巡り合わせを感じます。「篤」という文字は、「竹」に「馬」と書きます。これは馬が着実に、どっしりと大地を踏みしめて歩む姿を表しています。そこから転じて、「揺るぎない」「誠実である」「心がこもっている」という意味になりました。竹のように節度を持ち、馬のように歩みを止めない、そんな「厚み」のある誠実さを象徴しています。今の世の中は、情報の速さや損得の計算にばかり目が向きがちです。しかし、そんな時代だからこそ、効率では測れない「人情」や、一度交わした約束を守り抜く「信義」が、私たちの心を温める一番の薪(まき)となります。「篤い」とは、表面的な優しさではありません。相手が苦しい時こそ寄り添い、裏切らず、真心を持って接し続ける「重み」のことです。狭山茶が冬の厳しい寒さに耐え、じっくりと旨みを蓄えるように、人情もまた、時間をかけて誠実さを積み重ねることで、誰にも壊せない信頼という名の「篤実(とくじつ)」へと変わるのです。どうぞ今日は、身近な人への言葉一つ、所作一つに、いつもより少しだけ「熱」と「厚み」を込めてみてください。その誠実な心が、冷え切った冬の世を優しく照らす光となります。