
仁とは、他者を深く思いやる慈愛の心
Jin is a compassionate heart that cares deeply for others.
選字の背景:己の如く人を愛し、慈愛の心で周囲を照らし出す。
暦の上では春ですが、実際には「三寒四温」の言葉通り、冬が最後の手を離すまいと冷気を残す時期です。そんな凍える朝だからこそ、人の温もりが何よりの薬となります。「仁」という文字は、「自分と相手、その間に流れる情愛」を象徴しています。儒教の祖・孔子が最も重んじた徳目であり、人間が人間であるための「最高美」とも言われます。禅や武士道の文脈でも、「仁」は単なる「優しさ」ではありません。それは、相手の痛みや喜びを自分のことのように感じ、慈しむという、非常に力強く、能動的な心の働きです。 自分が立っていたい場所を相手に譲る。自分が得たいと思うものを相手に先に与える。そんな、「己を後回しにして人を想う」心のゆとりが、殺伐とした世の中に柔らかな光を灯します。普段何気なく飲んでいるお茶も、一人で飲むより誰かと分かち合うことで、その味わいはいっそう深まります。「仁」という字を心に置くということは、今日出会う誰かのために、心の急須をそっと温めておくようなものです。あなたのその「慈愛」という名の湯気が、凍えた誰かの心を解きほぐすきっかけとなるでしょう。