
光が強ければ影も濃い。自己の負の側面から目を背けない
Where the light is strong, the shadow is also dark. Don’t turn a blind eye to the negative aspects of yourself.
選字の背景:光の裏にある己の影を、恐れず深く受け入れよ。
梅雨の晴れ間、私の住む群馬の古民家には、山の木々の隙間から驚くほど鮮烈な夏至間近の光が差し込んでいます。人里離れた水源の近くで、静かに墨をすり、己の内面と向き合う日々。光が強ければ強いほど、その足元に落ちる「影」もまた、驚くほど黒々と、濃くなっていくことに気づかされます。本日、六月十七日。眩しい陽光が、瑞々しい青葉の輪郭をくっきりと地面に写し出しています。「影」という文字は、景(光、明るい景色)に、髪の毛が長く美しい様子や飾りの線を意味する「さんづくり(彡)」を添えたものです。つまり、光があるからこそ形作られる、美しくも不可欠な「光の反転」を表しています。私は幼い頃からスポーツ万能で、長距離の選手として遮二無二トラックを走っていました。強い日差しを浴びて先頭を走るとき、いつも私のすぐ傍らには、息を呑むほど濃い自分の影がぴたりと並走していました。当時はただ前だけを見ていましたが、大学で禅に出会い、書を学ぶようになってから、本当の意味で「影」と向き合うことの大切さを知ったのです。書を一枚書き上げるたび、自分の技術の未熟さ、心の乱れ、他人に認められたいという虚栄心といった「負の側面(影)」が、白い紙の上に容赦なく現れます。かつてはそれを見たくなくて、破り捨てたくなることもありました。しかし、禅は教えてくれます。影から逃げることは、自分を照らす光をも否定することだと。己の弱さや醜さという「影」から目を背けないこと。それらを丸ごと引き受けて初めて、あなたという人間の光は、本当の深みと輝きを持ち始めます。六月も後半へ。もし今、あなたが自分の中の嫌な部分に直面したり、輝いている誰かと比べて孤独の影に沈んでいるとしても、どうかそれを恐れないでください。強い光を浴びて前へ進もうとする人ほど、影は色濃く現れるものです。その影を隠すのではなく、愛おしみ、真摯に見つめる。その覚悟を持てたとき、あなたの書く人生という一文字は、誰にも真似できない立体感と気品を纏うようになるはずです。