
困難や過去を乗り越え、新たな段階へ進む
Overcoming difficulties and the past to move on to a new stage.
選字の背景: 今の限界を飛び越えよ。その先に新天地あり。
「越」という文字は、「走(はし・る)」に、まさかり(戉)を加えた形です。まさかりは力強さや威厳の象徴。つまり、ただ漫然と通り過ぎるのではなく、走るような勢いと、困難を断ち切る強い意志を持って、境界線を踏み越えていく様を表しています。私たちは知らず知らずのうちに、過去の失敗や栄光、あるいは「自分はここまでだ」という限界の壁を作り、その手前で足踏みをしてしまいます。しかし、この教訓は、その壁は行き止まりではなく、乗り越えて新しい景色を見るための「高い段差」に過ぎないと教えてくれています。日本では大晦日に「年越し蕎麦」を食します。これは、一年の苦労や災厄を断ち切り、身軽になって新しい年へと「越え」ていくための儀式です。 書道においても、半紙という枠の中に収まろうと縮こまるのではなく、その枠さえも気持ちの上で乗り越え、天地いっぱいに気を満たした時、真に勢いのある文字が生まれます。どうぞ、今の苦しみや停滞を、次に進むためのハードルだと捉え直してみてください。それを「えいやっ」と越えた向こう側には、まだ見たことのない新しい自分が待っているはずです。