
迷いの海を渡る、教えという舟
A boat called teachings that crosses the sea of confusion.
選字の背景: 教えは渡し舟。迷いの海を越え、彼岸へ。
暦は師走に入りました。わずかに葉を残した木立も冬の冷たい風に吹かれる度、荒波の上の小舟のようにざわめいております。「舟」という文字は、一本の木をくりぬいた素朴な小舟の形から生まれました。大きな帆船ではありません。しかし、その小さな木片が、私たちを溺れることなく、向こう岸へと運んでくれるのです。仏教では、この苦しみや迷いの多い世の中を「苦海(くかい)」と呼び、そこを渡って悟りの岸(彼岸)へ行くための手段を「舟」や「筏(いかだ)」に喩えます。私たちは人生という海で、自身の力だけで泳ぎ切ろうとしがちです。しかし、波は高く、水は冷たく、やがて力尽きてしまいます。この教訓は、無理に泳ぐのではなく、先人たちが残してくれた「教え」や「智慧」という舟に、素直に乗ることを勧めています。迷った時、古典の言葉を開く。師の教えを思い出す。あるいは、ただ手を合わせる。それが「舟に乗る」ということです。その舟は、荒波の中でも決して沈むことなく、あなたを静かに、あるべき場所へと運んでくれるでしょう。