
人として踏み行うべき正しい道
The right path to follow as a human being.
選字の背景: 「義」とは心の背骨。迷わず正道を貫く勇気。
紅葉していた木々も色を失い、目に映る景色には一抹の寂しさを覚えますが、空気は研ぎ澄まされた刃のように冷たく、清らかです。この「義」という文字は、そのような寒空の下でも決して色褪せぬ、常緑樹のような強さを感じさせます。「義」という文字は、美しさや善きものの象徴である「羊」を、自分自身を表す「我」の上に戴(いただ)く形から成り立っています。それは、私利私欲という「我」の上に、公共の善や、人としての美徳を掲げる姿。つまり、自分の利益(利)よりも、人として成すべき正しさ(義)を優先する、高潔な生き方を示しています。現代は、ややもすれば「損か得か」という計算だけで物事が判断されがちです。しかし、この教訓は、計算を超えたところにこそ、人が人として生きる真の道があると説きます。誰も見ていなくとも、お天道様に恥じぬ行いをする。困っている人がいれば、損得を忘れて手を差し伸べる。約束を守り、恩に報いる。それらは時に、不器用で、損な生き方に見えるかもしれません。しかし、その「義」の道を歩む時、私たちの心には一点の曇りもなく、その足取りは大地を踏みしめるように力強くなります。私もかつて、勝敗という結果の世界に身を置いていたことがありましたが、最後に心に残った誇りは、勝ったことではなく、正々堂々と挑んだこと、すなわち「義」を貫いた自負でした。迷った時は、損得ではなく「どちらが人として美しいか」を問うてみてください。その答えこそが、あなたの進むべき「義」の道なのです。