
見返りを求めず、無心で奉仕する喜び
The joy of selflessly serving others without expecting anything in return.
選字の背景: 「我」を捨て、無心で捧げる。そこに真の喜びが宿る。
「奉」という文字は、両手で大切なものを恭(うやうや)しく捧げ持つ様から成り立っています。そこにあるのは、捧げる相手への深い敬意と、捧げるという行為そのものへの、純粋な集中です。この教えは、その清らかな行為から、「自分の利益」や「他者からの評価」という我欲(がよく)を差し引いた、無心の心の在り方を説いています。私たちは、つい「これだけしたのだから」と、心のどこかで見返りを期待してしまいます。しかし、禅でいう「無心」とは、その期待さえも手放すこと。褒められるためでも、認められるためでもなく、ただ、今、目の前のなすべきことに心を込める。その行為の最中(さなか)にだけ宿る、静かで、温かな喜び。それこそが、この「奉」という一文字に込められた、最も尊い宝なのかもしれません。