
自己を主張するだけでなく、他者に道を譲る徳
The virtue of not only asserting oneself but also giving way to others.
選字の核:一歩退き他者を立てる。譲る勇気が和を築く。
冷たい風の中にも、春の兆しがはっきりと混じるようになりました。季節が移り変わる時、冬は無理に居座ることなく、静かにその場を春へと譲ります。この自然の摂理こそが、最も美しい「譲」の姿かもしれません。「譲」という文字は、「言(ことば)」に「襄(はらう、助ける)」を合わせたものです。単に「あきらめる」のではなく、「言葉を尽くして道を整え、相手を助け導く」という意味が込められています。現代社会は、いかに自分をアピールし、いかに前へ出るかを競い合う「奪い合い」の様相を呈しがちです。しかし、誰もが前へ出ようとすれば、道は塞がり、衝突が生まれます。 そこで、あえて一歩退き、他者に道を譲る。それは決して弱さの露呈ではなく、自分の内側に「他者を受け入れるだけの余白(ゆとり)」があるという、精神的な高潔さの証明です。禅の教えでは、これを「和顔愛語(わげんあいご)」の精神に通じると説きます。 穏やかな表情と慈しみの言葉をもって、相手を立てる。二月の終わり。あなたが今日、誰かに譲ったその一歩分だけ、あなたの心には新しい春の風が吹き込み、周囲との関係には柔らかな調和が生まれるはずです。