帰 – KAERU –

帰 KAERU かえる 家禅 IEZEN.JP

本来の自己、根源へと立ち返る

Returning to the true self, to the source.

雁は北へ帰り
鮭は生まれた川へ
万物が還るべき場所は
本来無一物の故郷

選字の背景: お彼岸も終わりに近づき、渡り鳥が南へ帰る頃。原点回帰をテーマとする。

秋が深まると、夏の間日本で過ごしたツバメなどの渡り鳥は南へと「帰り」、北の国からは雁などが渡ってきます。また、海で大きく成長した鮭は、産卵のために、自らが生まれた川へと命がけで遡上します。自然界は、この「帰」という大きなサイクルの中にあります。

禅語に「帰去来」(ききょらい)という言葉があります。これは、中国の詩人・陶淵明の詩に由来し、俗世の官吏の職を辞し、故郷の田園に帰る喜びを詠ったものです。禅ではこれを転じて、偽りの自己や、世俗的な価値観から離れ、人間本来の清浄な心の故郷に立ち返るべきだ、という教えとして用います。

私たちの「還るべき場所」、すなわち心の故郷とは、一体どこなのでしょうか。それは、「本来無一物」(ほんらいむいちもつ)の境地です 3。私たちは、生まれながらに何かを持っているわけではなく、また、死ぬ時に何かを持っていくこともできません。地位も、財産も、名誉も、すべては一時的な借り物に過ぎません。その真実に気づき、あらゆる執着から自由になった時、私たちは、真の心の安らぎ、すなわち故郷への「帰還」を果たすことができるのです。

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