寒 -KAN-

寒 KAN かん

厳しさの中に身を置き、精神を鍛える

Put yourself in a tough environment and train your mind.

選字の背景: 「寒」とは砥石なり。厳しさで己の心を研ぐ。

師走に入り、いよいよ「寒」の気が満ちてまいりました。思わず身を縮めたくなる季節ですが、古来、武道や芸道の修行は、あえてこの「寒」の時期に行われてきました。「寒稽古」などがその最たるものです。「寒」という文字は、家(宀)の中で、人が藁(わら)にくるまり、足元に氷(冫)がある様子から成り立っています。それは、耐え難いほどの冷気の中に身を置く姿です。人は温かい場所では、心身ともに緩みます。しかし、敢えて厳しい環境に身を置き、その緩みを排すことでしか得られない強さがあります。凍てつく寒さは、余計な思考や甘えを瞬時に削ぎ落とし、私たちの意識を極限まで研ぎ澄ませてくれます。手足の感覚がなくなるほどの厳しさの中でこそ、心は水晶のように澄み渡り、自分自身の核と向き合うことができます。梅の花が、百花に先駆けて寒中に咲き、清らかな香りを放つように。私たちもまた、この師走の寒さを避けることなく、自らを鍛える砥石(といし)として、静かに受け入れたいものです。

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