香-KAORI-

kaori

徳のある人の感化は、芳香のように広がる

The influence of a virtuous person spreads like fragrance.

選字の背景:声なき徳こそが、風に乗る香りの如く人を動かす。

冷たい風の中にも、日差しの柔らかさが少しずつ混じり始めました。空気は凛と澄み渡り、時折どこからか運ばれてくる微かな花の香りが、春の訪れを告げています。「香」という文字は、上に「黍(きび)」、下に「甘」と書きます。これは、収穫した穀物を蒸し上げたときに立ち上る、甘く豊かな匂いを表しています。 「香り」とは、目に見える形はありませんが、確実にそこにあり、触れる人の心を一瞬で和ませ、動かす力を持っています。儒教や仏教では、人の品格をこの「香」に喩えることがあります。 香木が自らを燃やして香りを放つように、徳のある人は、自慢したり声を荒らげたりすることはありません。ただそこにいるだけで、その誠実さや優しさが、まるで芳香のように四方八方へと広がっていきます。これを「徳香(とくこう)」と呼びます。 花の香りは風に逆らって流れることはできませんが、徳の香りは風向きに関係なく、境界を越えて多くの人へと伝わっていきます。狭山茶も、熱い湯を注がれて初めてその芳醇な香りを放ちます。私たちもまた、日々の生活という「熱」の中で自分を磨き、周囲の人々をそっと包み込むような、善き香りを放つ存在でありたいものです。

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