
言葉を持たずとも、その人の在り方から薫り立つ品格
A dignity that emanates from a person’s very being, even without words.
選字の背景:薫風の如く、徳ある人の品格は風を越え届く。
山々を渡る風は「薫風(くんぷう)」と呼ばれ、若葉の瑞々しい香りを届けてくれます。風そのものに色はついていませんが、それが通り抜けた後の清々しさは、誰の目にも明らかです。「薫」という文字は、草冠に、香りを出す袋を火で炙る様子を意味する「重」に似た形を組み合わせています。これは、単に表面を香らせるのではなく、「熱を帯びた内側から、重厚な香りがじっくりと立ちのぼる」様子を表しています。禅の世界には、徳のある人の品格を「徳香(とっこう)」と呼ぶ教えがあります。私たちはつい、自分の正しさや能力を言葉で証明しようと躍起になります。しかし、本当に品格のある人は、雄弁に語る必要はありません。その人の立ち居振る舞い、眼差し、そして静かな佇まいそのものが、良き香り(薫り)となって周囲を包み込むからです。香りは、風に逆らって流れることはできません。しかし、徳の薫りは風を越え、目に見えないほど遠くの人々の心にまで届きます。五月の連休、人混みや喧騒の中に身を置くこともあるでしょう。そんな時こそ、自分という存在がどんな「薫り」を放っているか、ふと考えてみてください。饒舌に自分を誇るよりも、誰かのために静かに動く。その一瞬の誠実さが、八十八夜の新茶のように、あなたの人生に深く、清らかな品格を添えてくれるはずです。