
素朴なものに宿る、滋養と癒しの力
The nourishing and healing power of simple things.
選字の背景: 七草の朝。胃を休め、飾らぬ滋養を取り込む。
一月七日。五節句の一つ「人日(じんじつ)の節句」であり、春の七草を入れた「七草粥」をいただく日です。「粥」という文字は、中央に「米」、その左右に「弓」と書きます。これは、米粒が炊かれて柔らかくなり、弓のように曲がったり、あるいはそこから湯気がゆらゆらと立ち上ったりする様子を表していると言われます。固い米が、水と火の力で解け、消化の良い優しい姿へと変わる様です。私たちは年末年始、つい「ハレ」の料理、すなわち味の濃いものや豪華なものを追い求めてしまいました。しかし、弱った胃が本当に求めているのは、飾り気のない、水と米だけの「素朴」な味わいです。禅寺の朝食もまた、粥(茶粥やお粥)です。「粥有十利(しゅうゆうじゅうり)」という言葉があり、粥には「色艶が良くなる」「気力が湧く」「宿食(消化されずに残ったもの)を除く」など、十の功徳があるとされています。 何も足さない、何も飾らない。その淡々とした味の中にこそ、生命を根本から養い、乱れた調子を「ととのえる」深い力が宿っているのです。今日いただく七草粥は、単なる食事ではありません。自然の草の生命力を借りて、酷使した自分自身を「労(いた)わる」ための、温かな儀式です。どうぞ、フウフウと湯気を吹きながら、熱い粥を啜(すす)ってください。その素朴な温かさが、お腹の底からじんわりと広がり、あなたを本来の健やかさへと戻してくれるはずです。