飾-KAZARI-

飾

華美な装飾を捨て、質実な本質を重んじる

Abandoning extravagant decoration and emphasizing simple essence.

選字の背景: 華美を去り、飾らぬ裸の魂で生きる。

庭の木々は葉という「飾り」をすべて落とし、黒々とした幹と枝だけの姿で寒風に立ち向かっています。しかし、その飾らぬ姿こそが、生命の骨格そのものであり、なんと力強く、美しいことでしょうか。「飾」という文字は、「食」に「人(または布)」を添えた形から、本来は供え物を整えたり、覆いをかけて清めたりすることを意味しました。それが転じて、表面を美しく繕(つくろ)うことを表すようになりました。私たちは、弱さを隠すために、地位や名誉、あるいは虚勢という「飾り」を身にまといたがります。しかし、過剰な装飾は、時に本質を見えなくしてしまいます。厚化粧が素肌の健やかさを隠してしまうように、飾り立てられた言葉や態度は、その人の「質実(しつじつ)」―飾り気がなく誠実な中身―を覆い隠してしまうのです。禅の美学である「わび・さび」は、まさにこの虚飾を削ぎ落とした先に現れる美しさです。華やかな花柄の着物よりも、使い込まれた藍染の野良着に、深い人生の美が宿ることがあります。書においても、下手に技巧を凝らして飾った文字は、見る人の心をざわつかせます。逆に、飾り気のない、朴訥(ぼくとつ)とした一本の線にこそ、書き手の魂が露わになり、深い感動を呼ぶのです。どうぞ今宵は、心にまとった飾りを一枚脱ぎ捨ててみてください。その下に在る、ありのままのあなたこそが、冬の木々のように最も強く、美しいのですから。

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