刻 -KOKU-

刻 KOKU こく 家禅 IEZEN.JP

「今、ここ」という一瞬を深く心に刻む

Engrave the moment of “here and now” deeply in your heart.

選字の背景: 過去にも未来にも非ず。「今、ここ」に全てを懸ける。

「刻」という文字は、刀(刂)でしるしを刻みつける様から生まれました。それは、後戻りのできない、一回きりの、集中を極めた行いです。そして、その行為から転じて、「時刻」のように、時の単位をも表すようになりました。私たちの心は、絶えず過去の後悔や、未来への不安へと彷徨い、本当に生きているはずの「今、ここ」という時間を、疎かにしてしまいがちです。しかし、過去はすでに過ぎ去り、未来はまだ来ていない幻。私たちが本当に触れることのできる現実は、この一瞬、この一呼吸の他にありません。この教えは、その二度とない一瞬を、まるで刀で彫り込むかのように、真剣に、そして丁寧に味わい、心に刻みつけよ、と説いています。書に例えるなら、それは、私が一本の線を引く行為に通じます。筆が紙に触れる、その刹那。過去の失敗も、未来への気負いも、全てを手放し、ただ「今、ここ」に全存在を集中させる。その一瞬の覚悟が、紙の上に、消えることのない命の軌跡を「刻む」のです。お茶を一口、深く味わう。人の言葉を、心を込めて聴く。窓から射す光の美しさに、ただ心を奪われる。その一つひとつが、「今、ここ」を心に刻む、尊い禅の修行なのでしょう。

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