寿 – KOTOHOGU –

寿 kotohogu ことほぐ 家禅 IEZEN.JP

真の長寿とは、瞬間の質の深さにある

The essence of a long life is found not in its length, but in the profundity of its moments.菊の盃に 不老を願うよりも 一期一会の この一瞬を深く生きる

選字の背景:陽数(奇数)の極みである「九」が重なる重陽の節句。真の長寿について考える。

九月九日は、重陽の節句です。古来中国では、この日に菊の花を酒に浮かべた菊酒を飲み、邪気を払って長寿を願う風習がありました。この「寿」という文字は、そうした祝いの心、命の永続への願いが込められた、まことにおめでたい一字です。

しかし、禅的な視点から「寿」を捉え直す時、その意味は、単なる年月の長さを超えた、より深い次元へと至ります。私たちは何年生きるか、という「量」に囚われがちですが、本当に大切なのは、いかに生きるか、という「質」ではないでしょうか。

詩は、不老長寿という手の届かぬ願いよりも、今ここにある「一期一会」の出会いや経験を、全身全霊で味わうことの尊さを詠っています。茶道で重んじられるこの言葉は、すべての出会いが一生に一度きりのものであると心得、誠心誠意、その瞬間に臨むべきだという教えです。たとえ短い人生であっても、一瞬一瞬を深く、豊かに生き抜いた人の生涯は、漫然と長い年月を過ごした人生よりも、遥かに「寿」であると言えるでしょう。「日日是好日」(にちにちこれこうじつ) 。毎日をかけがえのない一日として大切に生きること。それこそが、私たちが実践できる、最高の長寿の秘訣なのです。

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