水 – MIZU –

水 MIZU みず 家禅 IEZEN.JP

柔軟であれ、謙虚であれ、そして力強くあれ

Be flexible, be humble, and be strong.

方円の器に随い
自らは形を持たず
低きに就くを常として
やがて大海に至る

選字の背景: 秋雨が降るかもしれない日。万物に順応する水の在り方に学ぶ。

古代中国の思想家、老子は「上善は水のごとし」と述べました。最も理想的な生き方とは、水のようなものである、という意味です。禅においても、この「水」の在り方は、修行者が目指すべき境地として、しばしば説かれます。

水は、自らの形に固執しません。詩にあるように、四角い器に入れば四角く、丸い器に入れば丸くなり、あらゆる状況に柔軟に対応します。また、水は、常に他者と争うことなく、自ら低い方へと流れていきます。その謙虚な姿勢は、しかし、弱さの現れではありません。その絶え間ない流れは、やがては小さなせせらぎから大河となり、ついにはすべてを受け入れる広大な海へと至るのです。

私たちは、自我という固い「形」にこだわり、他者と争い、より高い地位を目指そうとします。しかし、そうした生き方は、絶え間ない緊張と衝突を生み出します。「水」の一文字は、私たちに全く異なる生き方を提示します。我を捨て、流れに身を任せ、謙虚に、しかし着実に、自らの本分を尽くしていく。その先にこそ、あらゆる対立を超えた、大海のような、広々とした心の境地が開けているのです。書において、筆に含ませる水の量が、墨色に無限の表情を与えるように、私たちの人生もまた、この「水」の如き柔軟な心を持つことで、より深く、豊かなものとなるでしょう。

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