老 – OI –

老 OI おい 家禅 IEZEN.JP

老いを衰えでなく、円熟と智慧の深化と捉える

Aging isn’t about decline, it’s about ripening and getting wiser.

枯れるのではない 実るのだ 秋の陽を浴びて 円熟の時を迎える

選字の背景: 敬老の日の翌日。「老い」というテーマをさらに深く掘り下げる。

現代社会において、「老い」は、しばしば体力や記憶力の衰えといった、ネガティブな側面ばかりが強調されます。アンチエイジングという言葉に象徴されるように、老いることは、できるだけ避け、隠すべきことであるかのような風潮さえあります。しかし、この「老」という一文字を、禅的な、あるいは自然の摂理に則った視点から見つめ直す時、全く異なる風景が立ち現れてきます。

詩は、「老い」を、植物が枯れていく過程ではなく、果実が熟していく過程に喩えています。春に芽吹き、夏に青々と葉を茂らせた木々が、秋の穏やかな陽光を浴びて、その生命活動の集大成として、豊かで滋味深い実を結ぶ。それと同じように、人間の「老い」もまた、人生の最終段階における「円熟の時」として捉えることができるのです。

若い頃の情熱や勢いは失われるかもしれません。しかし、その代わりに、数々の経験を通して培われた、物事の本質を見抜く洞察力、他者への深い共感、そして何事にも動じない落ち着きといった、円熟した智慧が備わってきます。禅の世界で、経験を積んだ老師が深く尊敬されるのは、まさにこのためです。私たちは、老いを恐れ、それに抗うのではなく、自然の恵みとして受け入れ、その時期にしか味わえない豊かさを楽しむ。そうした心の転換が、超高齢化社会を迎えた日本において、今まさに求められているのではないでしょうか。

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