存在するすべてへの感謝の念を深める
To cultivate a deep gratitude for all of existence.
選字の背景: 実りの秋、そして彼岸を通して祖先を思う時。万物への感謝の念を深める。
私たちは、食事の前に「いただきます」と言い、食後には「ごちそうさまでした」と言います。この美しい習慣は、単なる挨拶ではありません。それは、私たちの食卓に届けられる一粒の米、一枚の野菜のために費やされた、あらゆるものへの深い感謝(謝)の表明です。
詩の前半は、その一粒の米の中に、太陽や水といった「天地の恵み」と、農家の人々の「汗」、すなわち労苦が凝縮されていることを示しています。私たちの生命は、自分一人の力で成り立っているのではなく、こうした無数の存在の犠牲と働きによって支えられているのです。この事実に気づく時、感謝の念は自ずと湧き上がってきます。
禅の教えは、この感謝の範囲を、さらに広げていきます。自分にとって都合の良いことだけでなく、困難や試練といった、一見、不都合に思えることでさえも、自分を成長させてくれるための尊い「縁」であると捉え、感謝します。この世に存在するすべてのものは、互いに関わり合い、支え合っている(縁起)。その真理を深く理解する時、「ありがとう」という言葉は、単なる謝意の表明を超え、自分と世界との繋がりを確認し、その調和を願う「祈り」となるのです。