耕 – TAGAYASU –

耕 TAGAYASU 家禅 IEZEN.JP

人生は自らの心を耕し続ける営みである

Life is the practice of continuously cultivating one’s own mind and spirit.

固い土を鋤き返す 一汗の尊さよ 実りの秋は この一鍬(ひとくわ)から始まる

選字の背景: 八月最後の平日。これまでの夏の働きを労い、来たる秋の実りに向けて心を耕す。

「耕」という行為は、新たな生命を育むための、最も根源的で誠実な働きです。固く締まった大地に鍬を入れ、土を柔らかくし、空気や水が通る道を作る。それは、来るべき実りのための、地道で忍耐強い準備の過程に他なりません。

詩は、その肉体的な労働の中に宿る精神的な価値を詠んでいます。流れる汗の尊さは、単なる労働の対価としてではなく、未来を創造する一歩としての価値を持ちます。豊かな実りをもたらす秋は、決して自然に訪れるものではなく、夏の盛りの、この骨の折れる一鍬から始まっているのです。

この教えは、私たちの心のあり方にも通じます。固定観念や古い習慣によって固くなった心を、学びや内省によって「耕す」こと。それは時に痛みを伴い、困難な作業かもしれません。しかし、その努力なくして、新たな智慧や人間的な成長という「実り」は望めません。禅の修行もまた、この「耕す」営みであると言えます。坐禅や作務を通して、絶えず自己の心田を耕し、仏性の種が芽吹く土壌を整えていくのです。八月も終わりに近づいた今日、この夏に流した汗を振り返り、そして来るべき秋に向けて、静かに自らの心を耕す時間としたいものです。

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