月 – TSUKI –

月 TSUKI つき 家禅 IEZEN.JP

悟りの象徴。見えずとも常に存在する真理

A symbol of enlightenment. The ever-present truth that exists even when unseen.

雲に隠れようとも その姿は変わらない 我が心の闇を照らす 一輪の明月

選字の背景: 十五夜が近づき、月への意識が高まる頃。

古来より、月は詩歌や芸術の題材として、日本人の心に深く寄り添ってきました。禅の世界において、「月」は特別な意味を持ちます。それは、悟りや仏性の比喩として用いられます。月そのものは、常に満ちており、欠けることなく天空に存在しています。しかし、私たちの目には、雲に隠れたり、満ち欠けをしたりするように見えます。

これは、私たちの仏性と全く同じです。仏性、すなわち悟りに至る可能性は、すべての人に本来備わっています。しかし、煩悩や迷いという「雲」によって、その光が見えなくなっているだけなのです。詩は、どのような状況にあっても、月の本体が変わらないように、私たちの内なる仏性もまた、決して失われることはない、という希望を詠っています。

「有水皆含月」(みずありてみなつきをふくむ)という禅語があります。どのような川や湖も、その水面に月を映すように、どのような人でも仏性を持っている、という意味です。人生には、悩みや苦しみという分厚い雲が、心の空を覆う時期があります。しかし、その雲の向こうには、必ず円満な月が存在していることを忘れてはなりません。そのことを信じ、静かに坐して雲が過ぎ去るのを待つ。その心の姿勢こそが、禅の修行なのです。

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