敬意とは、相手の仏性を深く拝む行為
Respect is deeply recognizing and honoring the Buddha-nature within everyone.
選字の背景: 敬老の日。祝日として、改めて「敬う」という行為の本質を考える。
九月の第三月曜日は、国民の祝日「敬老の日」です。この日は、多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う日とされています。この「敬」という一文字は、私たちの社会の根幹をなす、極めて重要な徳目です。
しかし、禅が教える「敬」は、単に年齢や社会的地位に対する形式的な礼儀作法に留まりません。それは、相手の存在そのものに対する、深く、全身全霊からの畏敬の念を意味します。詩に「その人の仏性に」とあるように、真の「敬」とは、相手の年齢や経歴の奥にある、本来備わっている尊厳、すなわち仏性に対して頭を垂れる行為なのです。
人生経験を重ねた人の顔に刻まれた皺は、単なる老化の印ではありません。それは、数多の喜びや悲しみを乗り越えてきた証であり、書物からは得られない生きた「智慧」の深さを物語っています。私たちは、高齢者を一方的に「ケアされるべき弱い存在」と見るのではなく、人生の先輩として、その経験と智慧に謙虚に学ぶ姿勢を持つべきです。相手の話に真摯に耳を傾け、その存在をありのままに受け入れる。その一瞬一瞬の真剣な関わり合いの中にこそ、「敬」の精神は息づいています。この祝日に、改めて、身近な年長者一人ひとりの内に輝く仏性を見つめ、心からの敬意を表したいものです。