内外の調和を保ち、穏やかに生きる
With a heart in harmony with the world, I walk a path of serene existence.
選字の背景: 一粒万倍日の吉日。他者や自然との調和の中に、真の豊かさを見出す。
「和」は、日本文化の根底に流れる、最も大切な価値観の一つです。それは、単に表面的な協調や、事なかれ主義を意味するものではありません。茶の湯の精神を表す「和敬清寂」(わけいせいじゃく)の「和」が示すように、自と他、主と客、人間と自然が、互いの存在を深く尊重し合い、調和した状態を指します。
詩の前半は、自然界に見られる「和」の姿を描いています。水は、四角い器に入れば四角く、丸い器に入れば丸くなり、自らを主張することなく、環境と一体化します。月は、分け隔てなく、地上のあらゆるものをその光で優しく照らし出します。これらの姿は、我を張らず、大きな流れに身を任せ、万物と調和して生きるという、老荘思想や禅の理想を体現しています。
現代社会は、競争と対立に満ちています。私たちは、他者に勝つこと、自分を主張することに価値を置きがちです。しかし、その先に真の幸福はあるのでしょうか。「和」の一文字は、私たちに問いかけます。争うのではなく、認め合う。支配するのではなく、共生する。その「和」の精神に立ち返ることこそ、個人にとっても、社会全体にとっても、持続可能な豊かさを実現する道ではないでしょうか。一粒万倍日の今日、蒔くべき最良の種は、この「和」の心なのかもしれません。