
書を読むことは、古人の心を読むこと
Reading books is reading the minds of ancient people.
選字の背景: 文字の奥に眠る、古人の息遣いや心音を読む。
空は高く澄み渡り、心地よい風が吹くこの頃は、「読書の秋」と申します。私も、この穏やかな午後の光の中で、一冊の古い書物を開いておりました。「読」という文字が示す通り、読書とは、言葉(言)と向き合う行いです。しかしこの教えは、ただ文字の表面をなぞるのではなく、その奥にあるもの、すなわち、その言葉を綴った人の「心」を読むことこそが、真の読書なのだと示唆しています。一冊の書物は、単なる紙と墨の束ではありません。それは、遠い昔を生きた誰かの喜び、悲しみ、発見、そして祈りが封じ込められた、一つの小宇宙です。ページをめくることは、時間と空間を超えて、その人の魂に触れ、静かな対話を始めることに他なりません。私が古典の法帖を臨書するときも、まずはその文字に込められた古人の心を、じっと読み解こうとします。その息遣いを感じられて初めて、私の筆先から生まれる線にも、かすかな魂が宿るように思うのです。読書とは、何千年も前の賢人を師とし、遠い国の詩人を友とする、最も贅沢な時間の旅。その一冊の中に、私たちは、決して一人ではないという、温かな真実を見出すのかもしれません。