然 – ZEN –

自然の理に従い、あるがままに生きる

Follow the laws of nature and live as you are.

 

選字の背景:飾らぬ本性。あるがままを受け入れる心。

この「然」という文字の成り立ちは、獣の肉(月)と犬(犬)、そして火(灬)を組み合わせた形から成り立っています。それは、火で肉を炙るという、生命の営みそのものを表す、ありのままの姿でした。そこには飾りも、思想もありません。ただ、そうである、という厳然たる事実。これが転じて「あるがまま」「そのとおり」という意味を持つようになりました。私たちが「自然(しぜん)」と呼ぶもの、それは「自(おの)ずから然(しか)り」、すなわち、何ものにも依らず、ただそのように在るもののことです。山はことさらに山の威厳を語らず、水はことさらに流れの美しさを主張しません。ただ静かに、あるいは激しく、その本性のままに存在しています。私たちは日々の暮らしの中で、つい何かを付け加え、本来の自分ではない何者かになろうとしてしまいがちです。しかし、山が山のようであるように、水が水のように流れるように、ただ「然」として在ること。無理をせず、飾らず、自らの内なる声に耳を澄ませ、あるがままの自分を受け入れる。その静かな強さこそが、この一文字に込められた禅の心髄ではないでしょうか。

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